2012年8月15日水曜日

どんな時にプロとしての自覚がつきましたか?

(注:本内容は某社で実施している1:1のキャリアコーチングサービスのクライアント向けに発行されたメルマガの内容のロングバージョンです)


皆さん、こんにちは。キャリアコーチの野口です。

毎日暑いですね。私は今年の夏は意識的にゆっくりと仕事をしています。
(昨夏は仕事頑張りすぎて疲労で秋の仕事の質が下がってしまったのでその反省です)
みなさんも本格的に仕事が進む秋になってパワーダウンしてしまわない様に気をつけてくださいね。自立した仕事人にとって大事なのは無理することではなくて、良いパフォーマンスをコントロールして出し続けられることですからね。
それじゃ本題です。

私はもう6年ほど当社の五年次社員の節目研修(キャリアデザイン)の講師をしているのですが、パネルディスカッション形式でプロフェッショナルCDP認定者からキャリア形成のヒントを学ぶコマがあります。(私も2度ほどファシリテーションをさせていただきました)

私のファシリテーションの腕が良かったかはさて置き(あら、そこ置くんだ?と突っ込まないでくださいまし)、その中で、ある共通パターンが浮かび上がってきました。それは「どんなタイミングでプロとしての自覚が芽生えましたか?」という問いに関してです。
(ちなみに当社の人事教育からの若手へのメッセージとして、「プロになってください」ということがここ10年以上一貫して発信されています)

当初、私は彼らから多様なパターンのプロ自覚ストーリーが紹介されるのを予想していたのですが、彼らのタイミングを総括すると皆同じものでした。
皆が一様に語ったのは、『プロジェクトorある独立した責任領域(開発・営業・研究開発等分野は様々)の実質的責任者としてステークホルダーの前面に立ってこれを遂行した時(もしくはその後)に自分は@@におけるプロなんだと自覚した』というものでした。

「公共系大型新規案件の先頭に立ち、利害の衝突するステークホルダーを調整して、受注した」

「高難度案件で、技術者の立場を超え責任者としてお客様の前面で全ての利害調整をし成功させた」

「自分が企画し開発した技術を、その顧客向け導入責任者として社内外をまとめあげて完遂した」

「提案したコンサル案件の責任者として、社内の支援が少ない中、顧客のメリットを追求し高い評価を得た」  e.t.c.

この様なものが挙げられていました。

これをみて「案件を責任者として遂行するとプロの自覚が出るの?そんだけ?そんなら私だっていつも責任感を持って仕事をしているんだけど。。」とか「自分はプロジェクトの責任者として仕事した経験があるけどプロの自覚は芽生えなかったなぁ」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。私も聞いた当初は「案外シンプルだな。。これを持ってプロ自覚のためのヒントと言えるかな?例外もあるのでは?」と思ったものですが、よくよく考えるとやはりこれは重要な示唆かなと思えてきました。
ただしこの経験には、パネラーからは語られていませんが、いくつかの要素が内包されている様に思われます。

  その案件の落としどころが着手時には明確ではない
答えや明確なゴールが見えている案件を粛々と遂行するのとは違うようです。たとえばあるプロジェクト案件をPMとして責任感を持ってただやりましたではどうやら不足なものがありそうです。「答えが見えない中で答えを探してもがく」という要素が重要なのかもしれません。

  自分の能力の限界と対峙してそれをなんらかの形で決着をつけた
これも「自分ができることをやる」のとは違いそうです。「自分の能力ではできるかわからない領域に挑戦して決着をつける」というのが大事なんでしょうね。ちなみに決着と書いたのは能力開発できて成功したという結果でなくても、「もっと成長して同じような失敗は絶対しない」というような強く想いを持ったという結果でも同じような意味を持つようです。

  案件の責任者として自分以外の他者(ステークホルダー)と対峙している
「自分の領域はここまで。そこにおいては全て責任を負いますが、その範疇外はどなたか(営業・上司・会社等々)にお任せしまーす」という感覚とは違いそうです。「基本、本件の責任は(曖昧な領域を含めて)全て自分にあります」という位置づけで前面にたって対応するのがポイントの様です。

  顧客的な存在から案件を決着させたことを認めたメッセージを受け取る
その大変な局面をなんらかの形で乗り越えることができたと顧客的な立場の人からフィードバック等で承認される事も重要な要素かもしれません(検収という意味ではありません)。ちなみにこれは顧客的な存在であり必ずしも社外の顧客に限られない様です。社内の関係部署でも上司でも該当しそうです。もちろん社外の顧客の方がよりインパクトは大きいでしょうね。
(ただ、これは必須要素なのかは不明です。自分なりの手ごたえがあればよいかもしれません)

さてここまで要素を挙げてみてあることに気づきました。自分の中からつぶやきが漏れます。
「なんだかこれは修羅場の成長経験で挙げられる要素と似ているなぁ。。でも修羅場の成長経験ってだけでは、プロの自覚と直接にリンクしているとは言えないよな。だって、修羅場を通して成長した(前回の私のメルマガの内容)時でも自分はプロ意識つかなかったしなぁ。」

上記と比較して、私の場合は、①のゴールが明確だったのと③に甘さがあったという差異はありましたが、この他にもなんか+αの要素がありそうな気がします。そこで自分のケースや他の知り合いのケースも含めていろいろと考えて出てきたのがこれです。

『誰かに与えられた役割を全うするという意味だけでなく、自分自身の存在価値を証明するといった意味合いも案件にこめられていた』
この案件をやり抜くことが自分ごとにおいてもきっと意味があるのだと(意識的にしろ無意識的にしろ)感じている状態と言えるでしょうか。また当然ですが、これに付随する形で、
『自分の仕事における存在価値とは何かについての内省が前後で行われている』
というプロセスも内包されているような気がします(内省が事前か事後に行われるかはケースバイケースではないかと思われます)。

これが、修羅場における成長経験とプロの自覚を促した経験をわけるポイントではないかと私は思いました。

いかがでしょうか?今回はパネルディスカッションで話された内容に(かなり)自分流の解釈を加えてみました。りっぱな学者や著名有識者が語ったものではないので間違っているかもしれませんのでご容赦を。追加質問や反論もなんなりとどうぞ。

上記以外に、パネルディスカッションで浮上した内容で留意しておくと役立ちそうなものも挙げておきますね。

○何のプロ?
パネラーの、プロとしての自己定義は多様で面白かったです。「勝つプロ」「悩むプロ」「案件を動かすプロ」「負けず嫌いのプロ」パッと見では何を言っているのかわからないものが多かったです。この中で興味深いのは「プロジェクトマネジメントのプロ」「営業のプロ」「データベースのプロ」といった職業タイトルそのままの自己定義をされている方はいませんでした。
これは、(前にも書いたかもしれませんが)キャリアの確立には2種類の要素があって、一つは「課業の専門化」といい、他者(市場等含む)により客観的な指標で定義、確立された専門分野を磨くという行為と、「独自ドメインの確立」と呼ばれる、自分が優位性を発揮できるユニークな専門領域を確立するという行為の二つを併せ持つことが求められることとつながります。ある程度仕事で成熟されたパネラーの皆さんは後者を意識していることがわかります。

○プロ定義の変遷(バージョンアップ)
実は私はこれが一番面白かったのですが、パネラーの多くの方が最初に意識した自分のプロ定義が変遷をしているか、しそうになっている状態でした。

「自分は『セキュリティ分野においてプロ性を磨いていこう』と思っていたのですが、最近ビックデータとセキュリティの領域が非常に接近してきていて、最近自分は『データ活用のプロ』といった方が自分をよく表わしている気がしています」

「『システムを作るプロ』位に思っていたのですが、最近は『課題の本質探しのプロ』という気持ちになってきました」

「自分は営業として『(競合案件に)勝つプロだ』と思っていたのですが、最近は『当社の世界観を体感していただくプロ』と言えるのかなとも思っています」  等々

「自分は@@のプロである」と決めてその後決めた道をひたすら固めていくのではなく、一旦位置づけた後でもキャリア人生を経るうちにその定義が変化していくというのは面白いですよね。その変化は『元のものから異質なものに変わる』『他の分野も統合してより大きなものになる』『より上位概念にシフトアップしていく』等々いろいろとパターンが存在していました。
これらの話から、プロを自覚した後にも色々なプロセスが続いていくことがわかるので、(よく若い時に考えがちな)『どのプロになるかを時間をかけて探し続ける』よりも、『とりあえず何らかのプロとして自己定義をして、それを研鑽していく過程でバージョンアップさせていく』考え方の方がキャリアを考える上で有効なのではないかと私は感じました。


今回はこれにて。以上です。


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